講座番号 | 0601009 |
期間 | 2024年4月15日 ~ 2024年6月10日 |
回数 | 4回 |
曜日 | 月 |
時間 | 15:00~16:30 |
定員 | 40 名 |
一般料金 | 10,000円 |
会場 | 三鷹サテライト教室 |
大君は薫に看取られながら息を引き取りますが、最後まで彼女は顔を袖で覆い隠していました。彼女は薫に対する愛を自覚した時から、自分の容色の衰えを強く意識するようになったのでしたが、作者は大君に「色衰えて愛弛む」(女の容色が衰えると男の愛もさめる)という中国の諺を固定観念として担わせているものと思われます。この固定観念のゆえに彼女は、男女の愛の永続性に対する深い不信感を抱いているのですが、その不信の深さはしかし愛の永続性に対する希求の深さと表裏一体のものだったでありましょう。なお、「色衰而愛弛」という諺は、中国文学においては〈婦人苦〉という『詩経』以来の伝統的な詩の主題に関わるものでした。また大君の死の直前には、亡き父宮が姫君たちへの恩愛の情の断ちがたさのゆえに往生できなかったことも明らかになります。
日程 | 内容 | |
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第1回 | 2024/04/15 | 薫に看取られながら息を引き取る大君 |
第2回 | 2024/05/13 | 往生できなかった八の宮――恩愛不能断の物語―― |
第3回 | 2024/05/27 | 宇治の大君にみる〈婦人苦〉の主題 |
第4回 | 2024/06/10 | 愛の永続性に対する希求と絶望 |
【必携テキスト】
新潮日本古典集成『源氏物語 七』新潮社 石田穣二・清水好子 1982年 3,960円(税込)
※上記教材をお持ちでない方は、詳細ページよりご購入ください。
藤原 克己
(ふじわら かつみ)
東京大学名誉教授・紫式部学会会長・博士(文学)
東京大学大学院博士課程中退。岡山大学教養部講師、神戸大学文学部助教授、東京大学文学部教授、本学文学部特任教授を歴任。博士(文学)。著書に『菅原道真と平安朝漢文学』(東京大学出版会)、『菅原道真 詩人の運命』(ウェッジ選書)、共著に『改訂新版 日本の古典――古代篇』(放送大学教育振興会)、『源氏物語 におう・よそおう・いのる』(ウェッジ選書)、『2008年パリ・シンポジウム 源氏物語の透明さと不透明さ』(青簡舎)、論文に「源氏物語とクレーヴの奥方」(柴田元幸編『文字の都市』東京大学出版会) などがある。